哲学と冗談

L'amore più profondo non può essere facilmente compreso.

prism

僕は透明人間で、影もできないくらいだけど、君には僕がしっかりと見えているみたいで、僕たちは、普通のカップルがそうするみたいにまるで当たり前のように、恋に落ちた。

君は僕と違って透明ではないのに、この色とりどりの世界を嫌がって苦しんで消えたくなって、逃げた先に、透明な僕がいて、他人に勝手に色付けられることを怖がった君と、何色にもなれない僕の、奇跡みたいな愛情の日々が、穏やかで暖かくて、僕は生まれて初めて、愛を知ったんだ。

「人を愛することではじめて、自分が今までどれだけの愛に包まれて生きてきたのか、わかるものなのよ。」と君は笑って、僕の一番好きな話をするんだ、愛とか、人生とか、幸せとか。

そうしているうちに、お腹が空いてきて、君の作ったクリームシチュー、人参が星型に切られていて、これは可愛さではなく皮を剥く手間を省いた意匠ってことは僕にもわかるのだけど、これが大変に美味しくて、昼間僕が買ってきたバゲットともよく合っていて、僕はお腹いっぱいになって、うとうとしながら、君と同じベッドで横になる。

そこでまた君は、本とか、バタークッキーとか、ワインを片手に愛とか人生とか幸せとかの話をして、僕は目を瞑りながら一生懸命君の話に耳を傾けるんだけど、やっぱり眠くなってきてしまって、頰に接吻をされて、朝まで眠るんだ。

 

この、愛を語る日々の、繰り返し、繰り返し、が遂には幸せそのものなのよ、と、教えてくれたのは君だったのに、どうして先に行ってしまうんだ。

色付けられるのを嫌がった君は、美しい君は、何処かの誰かに、大層な賞を貰って、カラフルな服を着て、おめかしして、何処かの誰かに、その命を奪われた。

君の最期は、美しい花で彩られて、モノクロの顔が夢の中にいるみたいで、僕はただ、僕だけが知っている君の本物の寝顔を、みんなに見せたくなくて、誰にも見つからないようにそっと、君の棺に入り、頰にキスをしたまま、動かなかった。

 

君に伝えたいことが沢山あるんだ。

どうしようもないほど好きで辛いこと。

苦しいほど愛して幸せなこと。

あの日の空が美しかったこと。

君を想って流す涙を君は知らないこと。

君がそっちにいるなら、僕は何も怖くないこと。