1月、分厚い靴下とコタツとお雑煮。あとキミ。
「お餅もっと入れようか?」
私が聞くとキミは無言で頷きながらこっちを覗いて、その瞳の美しさに思わず息を呑む。いつもキミはこうやって、言葉なんか使わずに私を惚れさせるのよ。
「何個?」
「んー2個。あーやっぱり、3個かな。」
にこっと笑うその上品な唇に、まっすぐな歯並びに、低いけど甘い声に、キミに食べられるお餅にすら嫉妬してしまいそう。
お餅よりも先に私にキスすればいいのに
なんて言葉は、口の中で消えてしまうの。
私の口の中で消えた言葉たちを集めてお雑煮にして文字通り雑に煮たら、甘ったるくてカロリー過多で、きっとキミに嫌がられちゃう。
恋の満足を味わっている人は暖かい声を出すものだ、と漱石は言っていたけど、キミの声は1月の寒さに耐えられる?
私が暖めてあげるから、燃料が足りなかったらこの身を燃やしてでもキミの熱量になるから、
キミだけはポカポカ暖かいコタツの中で、ずっと笑っていてね。