そういえば去年の年始は扁桃炎の症状が酷く、通院して抗生物質を点滴しながら寝込む正月だった。
元旦、お笑い番組でアキラ100パーセントさん(全裸になって股間をお盆で隠す芸の人)が生放送で出ていて、病気でフラフラな頭にはその分かりやすい芸が有難いな、と思っていた矢先アキラさんの本体()がちょろっと出てしまうハプニングが起きて、ただでさえそういう下ネタに弱い私は解熱剤の作用でハイになっていたこともあり笑った勢いで背後のテーブルの角に頭をしたたかに打ち付けた。これは効いた。
扁桃炎の症状に加え3日ほど割れるような頭痛に苦しんだ。むしろ扁桃炎は治ってきていたため頭痛の方がよっぽど酷かった。脳神経外科に行こうと思ったほどだが、アキラ100パーセントさんを見て頭をぶつけたとは言いたくなかったので我慢した。
数日が経ち扁桃炎も頭痛もほとぼりが冷めてきたところで、家族が快気祝いにディズニーシーに誘ってくれた。久々のディズニーシー。楽しみである。
今回何と言っても楽しみなのは、1年前(2017年)の10月ごろに新規オープンしたスティッチのアトラクション。
ザンビーニ・リストランテの近くに新しく建設され、遺跡×ハワイな感じのおしゃれなアトラクションだ。
開設当初ヒルナンデスで紹介されていた情報によると、イッツアスモールワールドのような船にのりハワイの海を航海し、3Dメガネによる効果でスティッチなどのキャラクターが触れるくらい近くに寄ってきてくれたりするらしい。
キャイ〜ンの天野くんと、CanCamモデルの堀田茜さんがスティッチのカチューシャやマフラーを着けてキャーキャー言いながら撮影していた。また、このアトラクション設営に伴い近くの出店でスティッチの顔のスイーツも発売されているらしく、こちらも堀田茜さんが美味しそうに頬張っていた。
スティッチは嫌いじゃないけど、スティッチのアトラクション作りすぎじゃない?たしかに可愛いけど…。と、友達と会話したことを覚えている。
初日は300分待ちとかだったけど、こういう船タイプのアトラクションは回転が早くある程度期間を置くと空いてくるので何ヶ月か経ったら行こうと思い2018年の1月になった。
もうオープンから何ヶ月か経ったし、開園と同時にファストパス貰って入れるくらいには空いたかな、とディズニーシーのサイトを見てみる。
無い。
無い。
スティッチの新アトラクションの情報が、どこを探しても、無い。
勘違いではない、確かにあの日、ヒルナンデスで、天野くんが、堀田茜さんが、3Dメガネをかけながら楽しんでいた、あれは夢ではない、この数ヶ月、頭の片隅にずっと記憶していたことだ。私はずっと、楽しみにしていたのだ。
でも公式サイトを探してもそんなアトラクションは無い。いやそんなはずはない。おかしい。
そういえば、友達と会話をしたではないか。スティッチの新アトラクションの、会話を。
だけど思い出そうとすればするほど、どんな話をしたのか、どこで話したのか、果ては誰と話したのかさえも、まるでお化けのように記憶が消えていってしまう。
おかしい。
どこから狂ったのか。考えろ。思い出すんだ。記憶の糸口を辿れ。
"あの日"だ……!
あの日、アキラ100パーセントで頭を打ち付けた衝撃で、私はパラレルワールドへ来てしまったのだ。異世界の空気に馴染もうとして頭痛が尾を引いていたんだ、間違いない。
扁桃炎で意識が朦朧としてたことで逆に邪念を考える余地が無くなりクリアな思考だったこと、元旦で世間全体が宗教を越えた超自然的スピリチュアルムードだったこと、アキラさんの男性器というファクター、その全てが偶然重なり、別の世界線(今みんながこれを読んでいる、この世界です)にトリップしてしまった。
大きく変わったのはスティッチの新アトラクションが無いことだが、他にも私の知覚できないところで何かが変わったのだろう。例えば南米エクアドルのジョーイくんの好きな食べ物がパステルデチョクロからゴエダンガンに変わってたりして。あー、気づかないわ。
実はこれを書いている今、あの日ぶつけた頭の後ろが痛くなってきている。自分の元いた世界線を無理に思い出そうとすると良くないみたいだ。
私は過去を捨てることにした。
この世界線で生きて行くと決めたのだ。もう1年もこっちで過ごしているじゃないか。だいぶ慣れてきたし、スティッチの新アトラクションが無くなったのは残念だけど私の人生に関係のないことだ。
それに、こっちの世界も中々楽しい。
もう元の世界には2度と戻れないと思うけど、私は幸せです。
元の世界の皆さん、男性器には、気をつけて。