中学生のとき、なっちゃんと友達だった。
なっちゃんはパワフルで明るくて繊細で豪傑で、それはそれは可愛らしい女の子だった。
小学生の時に完全に心が擦れて枯れてささくれ立ってしまった私は、そんな彼女を発見して、
太陽みたいでもあるし、ブラックホールみたいでもある、と思った。
近づきたい。
偶然、なっちゃんも同じことを私に感じていた。
クラスも出身も違うのに、私たちは惹かれ合い、すぐにグズグズと依存し合った。
なっちゃんは生々しい人間の【生】を感じさせてくれる。
ホールケーキ、授業中の交換日記、クリスマス、廊下を制服のまま転がる、メリーゴーランド、2人だけの秘密の暗号、坂道の自転車、セックス。
明らかに私たちは恋をしていた。
なっちゃんはいつも私に驚きと感動と気づきを与えてくれる。どんな人間よりも大好きだった。
なっちゃんは、生理用のナプキンを裸で持ち歩いていた。
普通女の子はナプキンをポーチに入れて、トイレに行くときはそのポーチさえもハンカチで隠しながらコソコソと個室に入る。
みんながそうして月経であることを隠匿していたので、私もそうしていた。それが、当たり前だと思っていたから。
だからなっちゃんのリュックから、製品のままのナプキンがガサガサと出てきたときはギョッとした。
そのままで持ち歩いてるの。
驚いている私に、なっちゃんは
なんで隠さなきゃいけないの。生理は自然なことで恥ずかしいことじゃない。これをいやらしいとか汚らわしいと思うことが意識しすぎてるみたいで恥ずかしい。
更にナプキンを私に見せながら
ほら見て。とっても可愛いでしょ、お花とかハートとか描かれてて。この企業努力を隠すことは意味がないよ。
そう言うなっちゃんはとても可愛くて、女らしい、と思った。
なっちゃんは居なくなってしまったけど、私は今でもナプキンを裸で持ち歩いている。もう慣れた。
女の子に驚かれる度に、なっちゃんの言っていたことを思い出す。
当たり前なことって、ほんとうはこの世に無いんだよ。
ねぇ、なっちゃん、また私に、ナプキンを見せて。