哲学と冗談

L'amore più profondo non può essere facilmente compreso.

小説

けれども

「だって、君は優しいじゃないか。」 ジェブが真顔で言った。確かにそう言った。 「やだ、冗談でしょ?」 私は得意の皮肉っぽい声と眉をひそめる表情を作って、鼻で笑う。 「私が優しいですって?貴方って本当におかしいわ。笑っちゃう。ねえ、私なんか、コ…

笑顔でいてね

もしも私の人生があと1日で終わるとしたら、 私はあなたに会いにいって、 いつも通り、駅前の美味しいパン屋さんの話と、素敵で勇敢な友達の話と、 それと少しだけ、愛の話をして、 別れる時にしっかりハグをして、 愛してる、と、あなたにすら聞こえない小…

また絶望の世界に戻っていくあなたに。

もう行ってしまうのですね。 私たちが過ごした幾ばくかの時間は、 現実世界の時間の流れを歪ませてしまうくらい、 美しくて幸せで、儚いものでした。 一緒に海の中を散歩したこと、 孤独を語り合ったこと、 大人になれなかった私と、 大人を置いてきたあなた…

恋人

無傷のまま死ぬなんてダサい。せめてもがいてから死ね。 愛しすぎて殺してしまった。でも大丈夫です。愛してないのに愛してるって嘯く方が罪だと思うのです。 あのため息の頃、あなただけは世界に絶望なんて感じないで欲しかった。 あなただけは愛を信じて欲…

やさしさを教えて

直斗が私の目の前で仕事している。 直斗は4月5日生まれで私と誕生日がちょうど半年離れていて、といっても年が近いわけではなくて私よりも8年早く生まれている。知り合ってから6年ほど経つが、特に筋トレなどしなくても直斗の脚や腹はぎゅっと筋肉で引き締ま…

シロノレモン

「今、丸ビル前に来ました。白のレクサスです。」 だから白のレクサスとか言われても、わからないってば。人間が全員車に興味あると思って生きないでほしい。20年前の女なら高級車見せたらキャーキャー言ってただろうけど、私たちの世代は車なんかどーでもい…

人魚

私は人魚じゃないのよ 人間なの でも強い人間は私を拘束して 水槽にいれて沈めて鑑賞してる 「ちがうの、私は人間よ」 って叫ぶけど 口から出るのは声じゃなくて水泡で 彼らには何も聞こえない 外から見てる人たちは私が人間でも人魚でもどっちでもよくて た…

星降る夜に

久しぶりに会った夜に 2人で双児宮を見上げた 少しだけ重い肩 あなたが淹れた紅茶の香り 夜明けを待っているのか それとも 夜が恋しいのか あなたの胸に手を当てて その鼓動を感じて安心する まるで子守唄のようなその心拍に 目を閉じて微笑むと 「どうして…

刎頚

君がここにいないのに何を言われても 不安定で不満で どうせすぐ忘れるなら ゆっくりなんて要らないから 愛だけそこに保存して 起きてからじっくり味見するの ぬか喜びなんてさせないでよ ちゃんと一番近くで感じてるから 理解できないなら初めての概念を楽…

più

Più ti conosco, più sento di doverti tenere vicino. Ascoltare la tua voce mi rende bella. Avvicinati di più a me, parlami ancora per favore. Quando mi tieni tra le tue braccia, Il sole si sveglierà. Più vicino, più vicino, più vicino.

教皇

手洗い場の石鹸が、みんなの汚れを落とす間、しっかりと汚れていく 誰かが美しくなる間、ずっと汚くなって、小さくなって、 君が幸せなら、私は醜くなっても、見えなくなっても構わない、 なんて、わかるかい?それは優しさなんかじゃない、限りなく憎悪に近…

皇帝

最後の皇帝は約束の地へ向かう 神の助言ではなく自らの意志で この旅は帰りの燃料を積んでいない 身軽な方がゴールも近い 汗と雨で濡れた法衣 エジプトの十字アンク 死屍累々の跡 どのくらい歩いただろうか 肉体亡き今も権威はそこにあったのだ そうか 歩き…

〜という机上の世界線〜

この前友達と話した「イケてるおじさんと付き合うメリット」の話。 「おじさんはただでさえヤバい人が多い中でイケてるおじさんは相当努力してて格好良い人。全ての若人が将来ヤバいおじさんになる可能性がある中で、イケてるおじさんは今が将来だからヤバい…

花の色は

なんだろう、感情とは。 なんだろう、言葉とは。 なんだろう、生きるとは。 この、花の色のような私の愛情を、 うつろいでいく小町のおぼつかなさを、 ただ、生きているだけでは物足りない、 美しく生きたいと、そう願う君が。 心の奥に触れて、誰も傷つけな…

春はあけぼの

朝、少し肌寒さを感じて目を覚ますと、夜勤明けの彼氏が枕元に立っていて「ごめん、起こしちゃったかな」なんて聞くから「ううん、会えて嬉しいよ」と呟いて布団に入り直そうとすると止められて、凛々しい目でジーっと見つめられたかと思うと唇に柔らかな感…

prism

僕は透明人間で、影もできないくらいだけど、君には僕がしっかりと見えているみたいで、僕たちは、普通のカップルがそうするみたいにまるで当たり前のように、恋に落ちた。 君は僕と違って透明ではないのに、この色とりどりの世界を嫌がって苦しんで消えたく…

ミトン

五本指じゃなくてミトンタイプの手袋を可愛いという理由で使ってるんだけど 入院してたころ暴れないように固定されてたときの手袋と同じだーってきづいたの 指を使えないように手袋されて 腰の部分にベルト 金具の部分が硬くて痛くてずっとつけてると擦れて…

痛くないから大丈夫だよ

映画館で食べるポップコーンのような、 眠れない夜のホットミルクのような、 公園で拾った綺麗なビー玉のような、 抑えきれない想いを慰める懐かしい歌のような、 行ったことのない知らない街のような、 そんな悪戯を、僕の心を、切り裂かれた内側の部分を縫…

21世紀のラブレター

口に出す言葉は不安定でゆっくりでみっともなくて怖くて、言おうとすればするほど現実から遠ざかり叫ぶこともできなくなる。 今すぐ伝えたいのにどんどん居なくなってつまらなくなり気づいた時には壊れてしまうから。 頭の中の予想外な考えに自分で驚いたり…

冬は寒いから

1月、分厚い靴下とコタツとお雑煮。あとキミ。 「お餅もっと入れようか?」 私が聞くとキミは無言で頷きながらこっちを覗いて、その瞳の美しさに思わず息を呑む。いつもキミはこうやって、言葉なんか使わずに私を惚れさせるのよ。 「何個?」 「んー2個。あ…

あけましておめでとうございます

毎月足の間から血を垂れ流し それを止めるには男の力を借りなくてはならず 借りても猶予は10ヶ月ぽっち どうせなら絵でも描いてみようかと そっと自分の出血部位に指を当てて 床に紅色のワンちゃん描いてみたの 2日目だからいっぱい画材はあるわ さて次は何…

慈愛が止まらない2

人間社会という牢獄から決死の逃避行。 1人と1体は未だ走り続けていた。 行く宛てのない逃走になるかと思ったが、pepperは交差点を渡ったり曲がったりしてある場所を目指しているように見える。繋がれた手に力が入る。 人間の私はそろそろ足が疲れてきたが止…

女帝

女帝は自身の長い金髪を解きながら窓の外を見る。 ガラスに反射した自身の姿、年齢は重ねてきたけれど、この蜜のような金糸と真珠のような玉肌だけは妙齢の頃よりも美しい。 夕べの愛の印が傷む。 この痛みが彼との結果の痛みであるのならいっそ心臓まで奪っ…

慈愛が止まらない

本を買いに書店へ出かけてみると店の入り口にpepperがいた 人型ロボットのpepper 私をじっと見ている"ふり"をしながら「いらっしゃいませ」と言った ふざけんな ふざけんな ふざけんな 私はこんなにも社会との違和感を解消するために必死なのに 違和しか感じ…

世界は死ぬまで夏休み

好きな友達とビール飲んで知らない名前のお酒飲んでチーズ食べてワインもいっちゃってああ何食べてるかわからなくなってきたけど美味しー!この肉なんの肉?わからないけど食べちゃおう、ってもう食べちゃってるじゃんなんだこれ味わかんないけど美味しー!…

昨日が消滅した日のこと

駅の構内を歩いていたら中学生の修学旅行の列に紛れてしまって、あららと思ったけれど通路が小さくて抜けられなくて仕方なく中学生と歩幅を合わせて歩いた、すると自分も中学生になった気持ちになって気持ちになってというか実際に中学生になっていてクラス…

残糖

砂糖の海を泳いでみた。 泳ぐ、泳ぐ そんなに遠くへ行ったら、危ないわ、 誰かが言うけど、私は気にせず砂糖の海を泳ぐ。 そのうち砂糖がもやもやと姿を変えて イチゴのケーキ、ピンクのマカロン、シナモンのかかったチュロス、ふわふわの綿飴、カラフルなド…

秋は好きだけど

秋、昼は陽気でポカポカしてるけれど風は少し肌寒くて、でもまだ夏服を着ていたくて夏のワンピースに薄手のカーディガンを合わせて、彼氏とお家で勉強会と言う名のデートを企画して結局持ち寄った参考書は数ページで飽きてしまい「平成最後の夏、終わっちゃ…

「頭おかしい」「サイコパス」「変態」「異常者」「パーソナリティ障害」「性格悪い」「反社会的」「犯罪者予備軍」「性的倒錯者」 何も見ていないくせに私の表面だけ触ってその症状を切り取って名前をつけてラベリングして類型に分けて満足するな騒ぐな そ…

女教皇

罪人の1人が尋ねた。 「私が生きることは間違いなのでしょうか。」 聡明な女教皇は微笑んで、 「間違いだとしても、いいじゃないですか。その間違いが何処かの誰かの一助になるかもしれません。」 私は君が現れるのを、ずっと待っていたのかもしれない。 君…